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プロローグ:桟橋に魅せられて

 英国では各地の海岸に、貨物船のためではなく、人々が海を楽しむための桟橋を数多く見つけることが出来る。これらのユニークな桟橋は、英国が産業革命に成功し繁栄を謳歌した1800年代のビクトリア時代に建設された。詳しくは…
 この歴史的遺産としての桟橋は、その後も幾世代にもわたり保存、補修、再建され、今日の英国の人々にとって非常に身近な海辺の休暇やリフレッシュの場として定着し、愛され続けている。詳しくは…

まずは英国各地に現在も残る魅力的な桟橋のいくつかを紹介しよう。

イーストボーン桟橋

 多くの桟橋が残る英国の南東部海岸にあり、ビクトリア時代の雰囲気を漂わすひときわ美しい桟橋である。稀代の桟橋設計者ユージニアス・バーチの作で、1870年に開設された。落ち着いた街並みと海に映える白壁のホテル群、色とりどりの草花が咲き乱れる幅広い花壇、広々とした海沿いの散策路エスプラナードが実に気持ち良い。

ブライトン・パレス桟橋

 ブライトンはロンドンから近く、古くから開けた英国で屈指の大規模な海岸リゾートである。多くの画家が描いた有吊なチェーン桟橋(1823年~1896年)、ブライトン・ウエスト桟橋(1866年~2003年)に続いて1899年に開設された。桟橋の先端には、大規模なアミューズメント施設も整備され、昼夜人々で賑わう。

クレブドン桟橋

 東洋の貴婦人のようと評され、気品を感じさせる桟橋である。1869年開設。鋳鉄の杭桟橋が多い中で錬鉄を使ったスレンダーなアーチ式構造の桟橋が印象的である。また先端の瀟洒なパビリオンまで延びたボードデッキが清々しい。ここ英国西部海岸のブリストル湾奥は、潮位差が14.5mと全国で最も大きい。

スワネージ桟橋

 美しい景観と落ち着いた風情で知られるこの湾岸リゾートによく調和した端正な桟橋である。英国南西部の拠点リゾート都市プールからも程近い。1859年建造の桟橋に代え1897年に開設された。先端部の船舶係留に必要な水深を得るため、桟橋が途中で折れ曲がり、他の直線桟橋にない新鮮な印象を与えている。

クローマー桟橋

 英国東部アングリア地方の北海岸に位置し、多くの人々に愛され続けている瀟洒な桟橋である。開設は1901年。先端部の劇場は500人収容と小振りだが、シーズン中はミュージカルやコミカルなショーが上演され、大勢の観客で賑わい好評を博している。現在でも興行を続ける数少ない桟橋劇場である。

ブラックプール・ノース桟橋

 マンチェスターなど多くの工業都市を背後にもつ北西部海岸のブラックプールは、1800年代半ばから一大海岸リゾートに発展した。全国でも珍しく3本の桟橋を有するが、そのなかで最初に開設(1863年)された桟橋である。ビクトリア時代の雰囲気をよく残し、1500人収容の劇場は現在でも公演を続ける。 

ランディドノー桟橋

 ウェールズの女王と呼ばれる美しい桟橋である。1877年に開設され、リバプールなど英国西部の大都市から程近く、洗練された魅力溢れる海岸リゾートの中心施設として発展してきた。伸びやかに沖に向うビクトリア時代を偲ばせるプロムナード桟橋は、緩やかに湾曲した長く美しい浜辺によく調和している。

ソルトバーン桟橋

 切り立った断崖の下に広がる海岸、その中心をなす伸びやかなプロムナード桟橋である。北海に面し波浪が厳しい英国の北東部海岸に唯一現在も残る桟橋である。1869年開設以来、度重なる壊滅的な災害を乗り越えてきた。市街地から40m近く下の海岸まで、世界でも珍しい水力式の登山鉄道が今も上下する。